新手のヤミ金融(後払いサービス、広告レビュー報酬、前払いサービスなど)について


 ファクタリングのほかにも、主として消費者・労働者らに対して、後払いサービス・広告レビュー報酬・前払いサービスなど、色々な形で、「貸付け(融資)ではありません。」「貸金業ではありません。」といいながら、資金融通サービスを行うものがあります。

 これらのサービスは、金銭の貸付けではないから、利息制限法、貸金業法、出資法などの法律は適用されないと主張しています。

 そして、まるで合法な取引であるかのように、堂々とインターネットなどで宣伝広告をしています。

 

(後払いサービス・転売型)

 情報商材・デジタル画像などの無価値な商品を、後払い(5万円)で購入し、その商品を転売して、転売代金(3万円)を受け取ります。支払期日(給料日等)には、後払い代金(5万円)を支払います。実質的には、3万円を借りて5万円を支払う(利息が2万円)のと同じです。

 

(後払いサービス・レビュー報酬型)

 同じく無価値な商品を、後払い(5万円)で購入し、その商品について、レビューして、レビュー報酬(3万円)を受け取ります。支払期日(給料日等)に、後払い代金(5万円)を支払います。これも、実質的には、3万円を借りて、5万円を支払う(利息が2万円)のと同じです。

 

(ギフト券の売却)

 手元にないギフト券(5万円分)を、前払い(3万円)で売却し、先に代金(3万円)を受け取ります。商品の引渡期日(給料日等)に、5万円分のギフト券を別途、購入して送ります。これも、実質的には、3万円を借りて、5万円を支払う(利息が2万円)のと同じです。

 

(違約金の支払い)

 売却するつもりのない商品(スマホ)を、前払い(3万円)で売却し、先に代金(3万円)を受け取ります。商品の引渡期日(給料日等)に、商品を送る代わりに、違約金(5万円)を支払います。これも、実質的には、3万円を借りて、5万円を支払う(利息が2万円)のと同じです。

 

 これらは、どれもみな、3万円を借りて、5万円を支払った(利息が2万円)のと、何も変わらないように見えます。仮に、3万円を受け取ってから、5万円を支払うまでの期間が1か月とすると、実質年利は約480%です。

 (2万円÷5万円)×12か月×100=480

 

 これらの業者は、金銭消費貸借契約(金銭の貸付け)をしているのではないから、貸金業法、出資法、利息制限法は適用されない。合法なサービスである、というように主張します。

 しかし、実際には…

① それ自体には、金銭的な価値はないと考えられるもの(デジタル絵画・情報商材など)、最初から換金目的と考えられるもの(ギフト券など)が売り買いされている。

② 利用者は、引き渡すつもりがないもの(スマホ)を売却して資金を手にし、業者は、受け取るつもりがないもの(スマホ)を購入して、違約金で利益を得る。

③ 銀行・クレジットカード・消費者金融などから借入ができない人のための資金融通のサービスとして利用されている。

④ 利用者が受け取るもの(3万円)と負担するもの(5万円)との差額(2万円)が大きく、実質的には、ヤミ金から高利で借りたのと同じ結果になっている。

などの問題があります。

 

(貸金業法違反、出資法違反について)

 貸金業法は、金銭消費貸借契約(金銭の貸付け)ではなくても、「手形の割引、売渡担保、その他これらに類する方法による金銭の交付」は貸付けに当たるとしています。

 2019年頃、給料ファクタリングという新手のサービスが出てきたときも、これは、実質的には高利のヤミ金融ではないか、と問題になりました。

 給料ファクタリング業者は、給料の一部を買い取るという形で資金融通をしているので「金銭の貸付けではない。と主張していました。そうして、貸金業法の適用はないので貸金業登録は不要である。出資法の適用もないので高金利は問題とならない、と主張していたものです。

 しかし、金融庁は、このような給料ファクタリングは「資金移転のシステム」に着目すれば「経済的に貸付けと同様の機能を有している」から貸付けに当たるという見解を明らかにしました。

 したがって、貸金業の登録を受けず、実質的には高利の貸付け(とみなされる資金融通サービス)を行っていた給料ファクタリング業者は、貸金業法違反(無登録営業)、出資法違反(高金利)のヤミ金融であった、ということになります。

 この点、最近、問題となっている後払いサービス(転売型・レビュー報酬型)、前払いサービス(ギフト券の売却・違約金の支払)なども、資金移転のシステムに着目すれば、経済的に貸付けと同様の機能を有しているので、給料ファクタリングと同じく、貸付けに当たると考えられるものです。

 そうすると、これらの業者の多くも、給料ファクタリング業者と同じく、貸金業法違反(無登録営業)、出資法違反(高金利)のヤミ金融であると考えられます。

 

(貸金業法42条・民法708条)

 これらの資金融通サービス(後払いサービス、前払いサービスなど)が、貸金業法、出資法の「金銭の貸付け」に当たるとすれば、ファクタリング業者と同じく、利用者が受け取った金額(転売代金・売却代金・レビュー報酬)と支払った金額(購入代金・ギフト券・違約金)との差額が、年利に換算して年109.5%を超えているときは、貸金業法42条により、その契約の全部が無効になります。

 利用者は、業者に対して、何らの契約上の支払義務もありません。また、無効な契約に基づき受け取った金額(転売代金・売却代金・レビュー報酬)が、不法原因給付に該当するので、不当利得として返還する義務もないと考えられるものです(民法708条)。

 

(早めのご相談を)

 これらのサービスを利用し、給料日等に、その支払をすると、次の給料日までの生活費が足りなくなるので、また同じようなサービスを利用するしかない、という悪循環になります。

 決して、安易に、これらの資金融通サービスに手を出さないように。また、すでに利用してしまっている人は、できるだけ早く弁護士・司法書士等の専門家に相談して下さい。

 全国ヤミ金融・悪質金融対策会議では、月1回(第2土曜日11:00~15:00)、無料電話相談を行っています。 詳しくはこちらをご覧ください。