個人間融資・ひととき融資などについて

●個人間融資・ひととき融資等、新たな手法の登場

 従来、ヤミ金融は、郵便チラシや電柱看板、電子メール、SNS等、何らかの方法で、顧客に対して貸金業者である旨を示して、金銭を貸しつけようとしてきました。

  しかし、最近では、ヤミ金融が貸金業者ではないかのように装って貸し付けるという手法が現れています。その勧誘・貸し付けに至る方法や内容ごとに、「個人間融資」「ひととき融資」等、様々な呼び方がされています。いずれも、ヤミ金による新たな手法だと考えられます。

 

●個人間融資・ひととき融資の手法

 「個人間融資」「ひととき融資」に明確な定義があるわけではありません。

  しかし、一般的に想定される「個人間融資」「ひととき融資」は以下のような手順がとられます。

 お金を借りたいと思っている人が、SNSや電子掲示板等に、金に困っている旨の投稿をします。その投稿をするきっかけは、自分でインターネット検索をして見つける場合もあれば、他のヤミ金融から「俺のいうとおりにすれば金を借りられる」と言われて掲示板やSNSを紹介・説明されて書き込みを行う場合もあります。

 その人の貸し付けを求める投稿に対し、ヤミ金融(体裁としては、業者ではなく「善意の個人」を装っており、場合によっては、借りる側の人も善意の人だと思い込んでいますが、ここでは以下、断りなく「ヤミ金融」と呼びます。)は、その人にお金を貸し付ける旨の回答をします。

  その上で、電子メールやSNS、電話番号の交換等により個人的に連絡を取り合い、ヤミ金融は、お金を借りたい人から、通常のヤミ金融が聞き取るような個人情報(住所・氏名・職場、親族の住所・氏名・職場等)を聞き取りつつ、利息や支払い方法を決めます。更に、電子マネーや架空口座からの送金、対面による手交により金銭を貸しつけます。

 この話の際、場合によっては、「担保」などと称して、お金を借りたい人に、裸の写真等を送らせる場合もあります(男性である場合でも、このようなことが行われることがあります。)。

 このようなお金の貸し方を一般に、「個人間融資」と呼んでいます。個人間融資の中で、とりわけ利息に代えて肉体関係を結ばせる手法を「ひととき融資」と呼ばれている例もあります。いずれにせよ、ヤミ金融の一形態にすぎません。

 

●個人間融資・ひととき融資の特徴と問題点

 個人間融資・ひととき融資の多くの手法の特徴は、①お金を借りたい人から不特定多数に対して金銭の貸し付けを求めさせる(または、そういう体裁をとる)という点、②ヤミ金融の側は、業者ではなく、あくまでもお金の借りたい人の求めに応じた親切な人という体裁をとる、という点です。

 ヤミ金融としては、自ら広く広告活動をしないことにより自身の素性がばれにくいというメリットがあります。さらに、ヤミ金融としては、自分はあくまでも単発的に貸し付けをしたものであって事業者ではないので高金利で貸し付けても貸金業法には違反しないと強弁できると考えていると思われます。

 また、お金を借りた人の方でも、ヤミ金から借りた「被害者」であるという意識をもちにくいということも、あるかもしれません。

 しかし、個人であっても、反復継続する意思をもって金銭の貸付けを行うことは、貸金業法上の『貸金業』に該当します。そして、個人間融資・ひととき融資をするヤミ金融は、その被害者に対して個人的に貸し付けをすべき動機・理由はないのに貸し付けており、利息を定めています。ですから、不特定多数に対して反復継続して貸し付けを行っていることが強く推認できます。

 個人間融資の貸主から、「私は個人で貸していて事業者ではない」「お前が頼むから善意で貸したのだ」などと言われても、「正当な貸金だというのであれば法的措置(訴訟)を起こしてくれ」と伝えた上で、通常のヤミ金と同様に元本も含め一切の返済を拒絶し(ヤミ金融側から法的措置を受け裁判所の判断を受けた場合でない限り、弁済をしない旨を通告し)、または弁済済みの金銭の返還を求めるべきです。

 

●ヤミ金融の側から勧誘している事例について

 先ほどの例は、主に、お金を借りたい人(被害者)の側から、金に困っている旨の投稿をするという形で行動を起こす例を挙げました。

 しかし、ヤミ金融の側が善意の個人を装って、不特定多数が閲覧可能なSNS等で「お金を貸します」、「融資します」などと書き込んで、契約の締結を勧めている例もあります。

  お金を借りたい人がこれに応じて貸し付けを申し込んだ場合、これは単に、ヤミ金による顧客勧誘の手法が、伝統的な郵便やチラシからSNSに移っただけの事例とみるべきであり、個人であっても不特定多数に貸付しようとしているので貸金業を営む目的をもって貸付けの契約の締結について勧誘しているといえます。

  そのため、この場合のヤミ金融は、明らかに貸金業法に反するといえます。格別にその手法を特別視する必要はありません。