「官報電子化の基本的考え方(案)」に対する意見

2023年7月28日

 

内閣府大臣官房総務課官報電子化検討室 御中

 

                     全国ヤミ金融・悪質金融対策会議

                         代表幹事 宇都宮健児

1 プライバシーへの配慮

 官報に掲載される情報は、法令の公布等のように広く一般国民への周知を目的とするものばかりではない。相続財産清算人選任の公告や失踪宣告など、個人の住所・氏名等の個人情報が掲載されるものも多く、破産公告のようにセンシティブな情報も掲載されるから、官報を電子化するのであれば、これらの個人情報をインターネットで公開することの問題点ととるべき対策等についても十分に検討しなければならない。

 したがって、「官報電子化の基本的考え方(案)(以下「報告書案」という。)の「官報電子化に伴い生じ得る課題への対応」(第4章)では、サイバー攻撃や通信障害への対策とともに、プライバシーの問題も真正面からとりあげ、項目を定めて、言及すべきである。

 

2 技術の活用(WEBスクレイピング対策)

 報告書案(61頁)は「適切な技術を活用するなど、プライバシーへの配慮のための必要な措置をとること」を求めているが、より具体的に記載すべきである。

 この点、現在のインターネット版官報でも、主要検索エンジンの検索対象からウェブサイトを外すよう設定し、画像処理するなどの施策を行っているが、それらの施策は「新・破産者マップ」などのように、官報に掲載された情報を違法に拡散するウェブサイトへの対策にはなり得ていなかったことを踏まえて、より実効的な対策が求められる。

したがって、単に禁止事項等や注意喚起をホームページに掲載する(報告書案61頁)だけでなく、破産公告などのセンシティブ情報については、いわゆるWEBスクレイピングを防止するための技術的措置(1つのIPアドレスから定期的または短期間に膨大な数のリクエストが送信されたときはブロックする、情報を閲覧するために特定の画像や文字列を選択させる(キャプチャ)、ログインした後にのみ情報を表示するなど)を講じるべきことを、報告書案に明記すべきである。

 

3 閲覧・頒布期間等

 報告書案(61頁)でも指摘されているとおり、全ての記事について閲覧・頒布期間を永続的にすることは、プライバシーへの配慮の観点から好ましくない。

 この点、報告書案(63頁)は「具体的な閲覧・頒布期間については、国民が官報の情報を受けるための合理的な期間を下らない範囲において、適時適切に定められるようにすることが妥当であると考えられる。」とするが、破産公告などのセンシティブ情報については、広く「国民」がではなく、「利害関係人」が情報提供を受けるために必要な期間を基準に考えるべきである。他方で、プライバシーへの配慮のために、閲覧・頒布の期間を限定すべき高度の必要性があることも考慮した上で、具体的な閲覧・頒布期間を検討すべきである。

 なお、現在のインターネット版官報は、本年1月に突然、公開期間を従前の30日から90日に拡大しているが、その理由は「国民の利便性の向上を図るため」としか説明されていない。このように、十分な議論もなく「プライバシーへの配慮」という観点からの検討もないまま「柔軟に対応」するという名目で(報告書案63頁)、なし崩し的に閲覧・頒布期間を拡大していくことは妥当でないから、各公告の閲覧・頒布期間については、プライバシーへの配慮という観点も十分に考慮した上で、慎重に検討する必要があることを報告書案に明記すべきである。

 また仮に、今後、「閲覧・頒布期間終了後に継続して行う情報提供」の検討を進めるとしても(報告書案64頁)、少なくとも破産公告等のセンシティブ情報については、すでに公告の本来の目的を終えた後であるにもかかわらず、広く一般に情報提供することは妥当でないから、このような情報提供を受けることができるのは、利害関係人が利害関係の存在と情報提供の必要性を疎明した場合に限定するか、または個人情報を削除した形で行うべきである。この点は、国立印刷局の官報情報検索サービスも同様である。

 

4 電子官報に掲載すべき情報

 今日のインターネット社会において、個人の住所・氏名等の個人情報を、電子官報に掲載し、インターネット上で公開していくことには、プライバシーへの配慮という観点から大きな問題があるから、電子官報への個人情報の記載は、本来、従来の紙媒体での発行を想定された官報よりも、抑制的であるべきである。

 このような観点から、破産公告における破産者の住所は、せめて市区町村までの記載にとどめるべきである。それでも、利害関係人への告知をし、手続参加の機会を確保するためには、さほどの支障はないと考えられるからである。

さらに、実際上、利害関係人の手続保障は、公告よりも、むしろ個別の通知(破産手続開始通知等)によって図られてきた実態があることを踏まえて、個人破産では、そもそも公告を不要とすることも、検討すべきである。

以 上

 

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